国土交通省 平成31年3月27日版

はじめよう!「標準的なバス情報フォーマット」

本書は標準的なバス情報フォーマットでデータ整備する意義やメリットを知りたいというニーズに応えるべく作成しています。

主な対象読者はバスに関する各種データを取り扱うバス事業者や自治体(コミュニティバス)の担当職員を想定し、情報化に向けた企画・立案の際に参考となるような内容で構成しています。

なお、『「標準的なバス情報フォーマット」ダイジェスト版(2019年3月)』は、バス事業の経営者や幹部向けに本書を要約して作成しています。合わせてご参照ください。

フォーマットの概要

「標準的なバス情報フォーマット」とは、バス事業者と、経路検索等の情報利用者との情報の受渡しのための共通フォーマットです。

本フォーマットは、静的データ「GTFS-JP」と動的データ「GTFSリアルタイム」の2種類のフォーマットを包含しています。

GTFSデータの構成イメージ

区分 フォーマット名 対象とする情報 ファイル形式
静的データ GTFS-JP 停留所、路線、便、時刻表、運賃 等 csvをzipで圧縮
動的データ GTFSリアルタイム
略称:GTFS-RT
遅延、到着予測、車両位置、運行情報 等 Protocol Buffers

静的、動的どちらのフォーマットも国際的に広く利用されている「GTFS」(General Transit Feed Specification)を基本としているため、整備した情報が迅速に世界中の経路検索サービスに反映されるという特長があります。

なぜ経路検索サービスが大事か

本フォーマット制定の目的の一つである経路検索サービスを通じた情報提供には、次のようなメリットがあります。

バスを調べる手段のNo.1

平成28年12月に内閣府が行った世論調査では、路線バスの利用手段・経路などを調べる手段としては、「インターネット等の経路検索サービス」を挙げた者の割合が41.3%と最も高く、居住地別では大都市、年代別では50歳代までの回答者でその割合が高くなっています。

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来訪者や外国人にバスを認知してもらえる

路線バスは、路線網が複雑で路線の改廃やダイヤ改正も多く、地図への記載やまとまった刊行物等も乏しいため、その存在自体が認知されづらい傾向にあります。経路検索を日常的に利用する来訪者にとっては、経路検索で情報が表示されないことは公共交通が存在していないことと同義 と認識されつつあります。

多言語案内に対応した経路検索サービスに掲載されることで、訪日外国人にもバスの存在を認知してもらいやすくなります。

他社線・他交通手段・徒歩ともシームレスに案内

バス事業者が経路検索事業者に情報を提供することで、他のバス事業者の路線、鉄道や航空等バス以外の交通手段、徒歩等も併せたシームレスな案内が可能となります。これにより、利用者はバスの存在を自然に認識することになり、バス事業者はこれまで取りこぼしていた旅客の需要を取り込むことが可能になるものと考えられます。

掲載費がかからないPR手段

現在、国内の主要な経路検索事業者においては、公共交通機関の情報を案内することに関して、交通事業者に対して特段の費用負担等は求めておりません。交通事業者は自社路線を無料でPRすることができます。

「標準的なバス情報フォーマット」のメリット

「標準的なバス情報フォーマット」に沿ってデータを整備することには、バス事業者や自治体には次のようなメリットがあります。

小規模バス事業者やコミュニティバスも掲載される

これまで経路検索サービスに載りづらかった小規模バス事業者やコミュニティバスについても、本フォーマットにてデータを整備することで、より多くの経路検索サービスに掲載されやすくなります。

群馬県・富山県のバスオープンデータカタログ

バスロケ情報が経路検索に掲載される

大手バス事業者を中心にバスロケーション(バスロケ)システムの導入が進んでいますが、バスロケーション情報の経路検索サービス等への掲載は、大手事業者を含めてもごく限定的 な状況です。

事業者ごとの情報提供サービスだけでは、利用の広がりに限界があります。

自治体による観光アプリ等を通じた情報提供にも、開発コストや利用の広がりに課題があります。

バス事業者は、GTFSリアルタイム形式でバスロケーション情報を提供することで、経路検索サービスを通じた情報提供が簡易に行えるようになります。これにより、地域外から来る利用者にも、経路や出発時間を計画するタイミングで遅れ情報を伝えられるようになり、利用者は待ち時間のストレスなく安心してバスを利用できるようになります。

運行情報が経路検索に掲載される

GTFSリアルタイム形式には運行情報を含めることができます。これを活用することで、災害時やイベント開催中の、運休、迂回、増発等の情報を利用者に伝えることができます。

経路検索と連動した運行情報案内事例

多様な活用ができる(ワンソース・マルチユース)

バス情報は、経路検索以外の情報提供サービスや、各種交通分析にも有用です。標準的なバス情報フォーマットを多様に活用する「ワンソース・マルチユース」として、次のような活用方法が実施・提案されています。

  • My時刻表:その人の発着地にあわせた時刻表を出力
  • デジタルサイネージ:複数バス事業者を横断的に情報提供
  • マップ:路線図、バスロケマップ
  • 交通分析:運行本数や遅れの状況を可視化

岡山都市圏におけるバスデータの多目的活用

岡山都市圏におけるバスデータの多目的活用

  • My時刻表・マップ・交通分析

オープンデータとして提供することで、バス事業者や経路検索事業者以外の企業や個人によるサービス展開が期待されます。

バス事業者自身が案内の正確さを向上できる

鮮度向上

フォーマットの共通化により、データ更新にかかる期間が、従来の数週間~2か月程度から、数日~数週間程度に短縮するため、下記のような鮮度の高い案内が可能となります。

  • ダイヤ改正への即日対応
  • 年末年始・夏休み・イベント等の臨時ダイヤの案内

精度向上

経路検索事業者が正確にデータ化しきれていなかった情報を、バス事業者が正確にデータ化することで、下記のような案内が可能となります。

  • 正確な乗り場(標柱)位置、前後の徒歩ルート
  • 正確なよみがな・多言語表記

業務の効率化ができる

データ提供の一本化

経路検索事業者等へ提供するデータを「標準的なバス情報フォーマット」に統一し、データ配信サイトからの提供とすることで、ダイヤ改正時のデータ提供にかかる手間を削減することができます。

業務のIT化とあわせて実施

「標準的なバス情報フォーマット」にもとづくデータ提供と併せてダイヤ編成支援システム等を導入することで、路線・時刻表・バス停位置などの各種データを一元的に管理し、各種帳票等も出力できるようになります。

将来的には、「標準的なバス情報フォーマット」を用いた帳票出力、運行管理等の業務ツールも検討されており、これらが利用可能になれば一層の業務効率化が期待できます。

国土交通省 平成31年3月27日版

データ整備・活用事例

本書には、「標準的なバス情報フォーマット」に基づいたデータを整備・活用している事例、効果測定結果、交流・普及活動について記載します。

本書は、データ整備を進めようとしているバス事業者や自治体(コミュニティバス)の担当職員や、データを利用したサービスを企画・開発している方を主な対象読者として作成しています。

全国のデータ整備状況

国内で整備されているGTFSデータ・「標準的なバス情報フォーマット」データについては、下記サイト等にて一覧することができます。

2019年2月時点で全国90社が、標準的なバス情報フォーマット・GTFS形式のデータをオープンデータとして公開しています。(下図:東京大学 伊藤昌毅 作成、情報源:嶋田鉄兵)

標準的なバス情報フォーマット・GTFSデータ整備マップ

「標準的なバス情報フォーマット」データ整備・活用事例

データ整備事例としては下記の事例があります。

動的データ(GTFSリアルタイム)整備事例

バス事業者 静的データ出力システム 動的データ出力システム オープン化 取組紹介
宇野自動車 その筋屋
(Sujiya Systems)
バスまだ?
(Sujiya Systems)
配信サイト 講演動画
両備バス・岡電バス Bus-Vision
(リオス)
Bus-Vision(リオス) 配信サイト おしらせ
中津川市 その筋屋
(Sujiya Systems)
Sky Brain
(ヴァル研究所)
配信サイト 取組紹介
佐賀市交通局
(佐賀県 事業)
その筋屋
(Sujiya Systems)
ユニトランド 製 配信サイト 講演資料
みちのりホールディングス各社 PTD-HS
(ジョルダン)
PTD-HS
(ジョルダン)
おしらせ

宇野自動車・両備グループ

中津川市

佐賀県

静的データ(GTFS-JP)整備事例

整備主体等の特徴別の事例を下記に示します。

バス事業者 静的データ出力システム オープン化 整備主体等の特徴 取組紹介
永井運輸 その筋屋 配信サイト 中小事業者による自社整備 講演資料
青森市交通部 その筋屋 配信サイト 公営バスによる自社整備 講演資料
富山県内各社 その筋屋, 西沢ツール 配信サイト 県事業、市町による整備
地域IT団体(Code for)による支援
講演資料
群馬県内各社 PTD-HS(ジョルダン) 配信サイト 県事業、経路検索CPによる整備 講演資料
山梨県内各社 山梨大学, YSK e-com 製 配信サイト 県バス協会、地元IT企業、大学による協働 講演資料

群馬県

効果測定事例

「標準的なバス情報フォーマット」のデータ整備や、関連する取組の効果測定結果としては下記の事例があります。

観光・生活路線における利用促進効果

中津川市 アンケート調査

  • 「標準的なバス情報フォーマット」に基づき、静的・動的データを整備し、Google Mapsに掲載、病院の待合室にサイネージを設置。
  • 北恵那バス馬籠線の外国人乗客の2割以上がGoogle経路検索でバスの存在を認知
  • 北恵那バス苗木城線の日本人利用者の17%がGoogle経路検索でバスの存在を認知(中津川市Webサイト、口コミに次いで3番目に多い)
  • 病院の待合室に設置されたサイネージについて、画面表示について65%が「わかりやすい」、バスが利用しやすくなるかについて79%が「思う」と回答

静的データ整備後の検索数増加

広島県 経路検索数

  • 広島県内の経路検索数が前年比+23.5%(H25年度:約1,700万件/年 ⇒ H26年度:約2,100万件/年)
  • ※GTFS-JPによるデータ公開ではなく、経路検索CP独自のデータ整備による効果

バスロケーションシステムの利用促進効果

旭川市 アンケート調査

交流・普及活動

「標準的なバス情報フォーマット」の制定をきっかけに、バスデータを整備・活用する動きが各地で広がっています。これらのコミュニティ、イベント、アプリコンテストへの参加を通じて知識・交流を広げることが出来ます。

コミュニティ

イベント(実績)

※その他、地方運輸局、都道府県等で勉強会が開催されています。

アプリコンテスト(実績)